ビット総研では来月1日に発生する可能性が議論されてきた分岐についてフォローしてきた。これまで危惧されていたのはユーザー主導のソフトフォーク、UASF(提案番号BIP148)であり、これには最大級のマイニング企業、ビットメインが関与していた。
ところが、このリスクを軽減しようとするBIP91という提案がされ、先週にはその採択が確定、SegWitと呼ばれるシステムアップグレードへの賛同が確認された。
これによりBIP148によるソフトフォークは不要になり、当面の間ビットコインの分岐のリスクは低下するはずであったし、この安定性を好感して市場は再び上昇に転じた。
今回議論されているのは、これとは別の、ビットコインキャッシュと呼ばれる一派によるハードフォークである。ビットコインキャッシュの特徴はブロックサイズを現在の1MBから8MBに増加させようという動き。
ビットコインキャッシュの公式ウェブサイトによれば、8月1日にこのフォークを実施する。これによりインフラが安定し、取引速度が向上する。また技術的にブロックサイズを増やすことは単純であるが、今回の一連の流れで明らかになった通り、政治的に合意に達することが難しい。
ビットコインキャッシュはこうした政治的な合意プロセスなく、一部のインフラ事業者、投資家、取引所が、ビットコインコミュニティ全体の総意なくフォークを強行する点が異なる。
なお、今後も少なくても当面は、今現在使われているビットコインが本流であることが揺らぐものではないだろう。当初懸念されていたBIP148のフォークの主導者であったビットメインは、今回のビットコインキャッシュに加担していないことを正式表明した。よって当面、最大のビットコインのマイナーであるビットメインは、本来のビットコインにコンピューティングパワーを振り向ける。また同社はSegWitにも今のところ賛同している。
ビットコインキャッシュはビットコインと分岐するが、保有者には選択肢はなく、元のビットコインに応じてコイン保有者には自動的に一定のビットコインキャッシュが付与される。この対応について、国内大手取引所はまず資産保全に向けた対策をとるとユーザーに通知している。BitFlyerの方針は以下の通り。
当社は、分岐前にお客様の bitFlyer アカウントで保有されていたビットコイン現物の数量と同量の Bitcoin Cash をお客様に付与します。
まずは資産保全という面で多くのトラブルはないと思われる。本来のビットコインはBIP91採択によってSegWitへの移行が決まっており、インフラの改善が行われていくことでインフラが安定していくことが期待される。しかし今回のような強硬な分岐が行われる可能性が今後も起こりうることが、今回のフォークによって示された。
今後ビットコイン市場の動きを見るにあたっては、3つのポイントを今後も注視していく必要がある。第一に今回のようなビットコインのインフラ改善の動き、主要エコシステムのプレーヤーによる政治的な動きが見逃せない。これに続いて第二にビットコイン以外では、第2位のコインであるイーサリウムが新規通貨発行(ICO)のバックボーンでもあり、その動きが暗号通貨全体の先行きにも影響するだろう。第3に、ICOによる投資家保護やマネーロンダリング防止などに向けた、各国政府機関による規制の動きも、市場全体の動向を左右していくだろう。
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